ほろ酔い工芸

ほろ酔い工芸2022~四つの素材による酒器と県産日本酒

今年は予約制・お持ち帰り式です
内容:お好きな器1点 + 飲み物(日本酒)1杯 + おつまみ盛り合わせ
チケット:前売=4,000円/当日=4,500円

ここのところ、海外での人気ぶりを耳にする日本酒。
日本人には思いつかなかった料理とのペアリングや楽しみ方のスタイルにインスパイアされ、逆輸入的に日本でもファン層が広がりはじめています。
というわけで工芸の五月「ほろ酔い工芸」も、改めて日本酒にフォーカス。
好きな器・好きなお酒を選ぶ「ほろ酔い」のスタイルはそのままに、今回は、おつまみセットとともにお持ち帰りいただくテイクアウト方式にしています。
おつまみの提供は、松本の人気店『トキシラズ』!
作家の器と信州の銘醸&おつまみで、おうちでのほろ酔い時間をゆっくりしっとり楽しんでください。


角りわ子(勘六山)

東御市に広がる小高い丘のうえに建つ角さんのアトリエは、何と「夫の自作」。築20年ほど経つ今も時々手を入れつつ使っていて、「未だ建築中みたいなもの」と笑います。そんなアトリエで生み出される器のほとんどは、足もとの土を使ったり周りの樹木で釉薬をつくるなど、土地のエッセンスを加えたもの。自然の恵みを生かすそのしなやかな作陶姿勢からは、ものづくりへの愛着・愛情もたっぷり感じられます。実のところ、角さんのしなやかさの裏には、ガムシャラなまでに陶芸に打ち込んだ日々と、なかなかドラマチックな人生が。その詳細はご本人に聞いていただくとして……。

「盛りつけのことを考えて作陶している」という食器には、料理研究家などプロのファンも多数。お酒も引き立ててくれる角さんの器で、贅沢かつ芳醇なおうち飲み時間を楽しんでください。

角りわ子
https://riwakosumi.jimdofree.com/


スエ トシヒロ

福島に生まれ、愛知で陶芸を学んだスエさんが、長野県に越したのは約2年半前。車で通りかかった時「気持ち良さそう」と直感した駒ヶ根の地に根を下ろし、以来、アトリエを構えて作陶を続けています。「景色がとにかく最高なんですよ」と、窓外の雄大なアルプスを見つめ、通りかかる園児(アトリエのすぐお隣が保育園)たちに声をかけたりかけられたり……。どちらかといえば緊張感や凛とした印象を与える磁器ですが、温かみを含んだスエさんの作品の秘密は、気負わない人柄にあるのかもしれません。

酒器も多く制作していて、熱燗用のちろりなども人気の一品。端正ながら包容力あるスエさんの器は、心を解くような酒時間を演出してくれます。

スエ トシヒロ
https://cykcyk.hatenablog.jp/


原田哲治(The Art Studio 8)

分厚く吹かれたガラスのうえに、ワニなどの動物イラストが描かれた花器……そんなユニークなスタイルの作品も手がける原田さん。スウェーデン発のグラールという技術によるそれらの大型作品は、制作に時間も手間もひまもかかり(ものによっては1ヵ月以上!)、自ずと値段も張ってきます。そうしたハイエンドな作品も手掛ける一方、身近に使えるグラスや器も制作する原田さんに、今回は日常使いのグラスを提案・制作していただきました。

トラックの荷台にガラス窯を載せて全国を回った経験もある原田さん。今回の会場に並んだグラスを手にとれば、その行動力で培われた確かな技術が、すぐおわかりいただけるはずです。

原田哲治(The Art Studio 8)
https://pinchan8.amebaownd.com/


櫛原文子

カナダでのワーキングホリデーなどさまざまな経験を経て、「人生の後半は好きな木工をやりたい!」と決意した櫛原さん。お子さんの小学校入学のタイミングで、自らも木工の専門学校に入学しました。以来、個人活動のほか木工会社での制作も行なうほど、木工漬けの日々。そんな櫛原さんが主に手がけるのは、「日々きちんと使える生活の道具」であり、食器など食まわりのアイテムです。

木材の種類による色や木目、手触りの違いを楽しんでもらいたいと、素地を活かした仕上げを心がける櫛原さん。経年変化や手入れによる違いを知るためにも、自作の器を日々の食卓で使っています。そうして得た知見を、制作時に反映する。櫛原さんの器に感じる使い勝手の良さは、生活の手応えに基づいた結果なのです。

櫛原文子
https://www.instagram.com/hygge_235/


小島泰治(猿江ガラス)

「最初は木工をやろうと思ってたんです」という小島さんがガラスの道を選んだのは、年齢を重ねた職人の鮮やかな手捌きを目の当たりにした大学時代のこと。広島で77歳の職人が見せた動きの無駄のなさに「思わず痺れました」。そして自身もガラスの道を歩みたいと思いを固め、大学でもガラスコースを選択。卒業後は安曇野アートヒルズミュージアムを経て、現在のスタジオでものづくりを続けています。

「こんなものをつくりたいという“ものありき”ではなく、とにかく常にガラスをつくり続けていたいんです」と話す小島さん。その言葉には制作に対する情熱が感じられ、手がける作品の幅も広く、クールな顔立ちだったり軽やかな色を纏っていたりと多彩です。キリリと冷えた日本酒を入れ、手に伝わる温度とともにグラスの表情も味わってみてください。

小島泰治(猿江ガラス)
https://sarueglass.com/

文・大輪俊江
写真・モモセヒロコ